かけるの千住日記

20 June

OFFICE WARS

地下の掃き溜め部署に各課からよそ集められた７人のOLたちの共通のアピールポイントは、強い肝臓だ。彼女たちは、肝臓＝お酒に強い…のを武器に接待攻勢による三ヶ月で5000万の売り上げ達成を拝命する。

仕事をしてお金をもらうってどういうことだ？そもそも仕事って、人生のなかにおいてどんな位置を占めるんだろう…？見ているうちにいつしかそんなことを考え始めるはず。

そして仕事をしている人なら誰でも、いずれかのキャラクターの、あるいはそのキャラに向けられたセリフにいつしか自分を重ね合わせることだろう。

自分の才能を信じているだけで、外に向かって動かなければ、ただのおたく。
美貌と若さでいまは男が貢いでくれるが、その先に保証される将来はない…。

こころにズシンと来るのはどんな言葉だろうか。

テンポよい、アニメチックな舞台展開と聞き応えある歌、そして踊り。
疲れていてもテンション下がり気味でも、思わず元気になること必至だ！
パフォーマンス要素満載！

23:59:29 | tenkakeru | |

23 December

おお、ジュニアが！

フィギュアスケート全日本選手権フリープログラムの様子を、テレビで観た。チャンネルを合わせ、思わず見入ってしまった。途中から観た。ちょうど、村上佳菜子さんの演技から。

あれまー。この間まで「おねいさん」たちの後ろから顔をちょこっと出す雰囲気で、初々しく元気いっぱいの演技を披露し、とびっきりの笑顔をふりまいていた中学生（いや高校生だったかなー。初めてみたのは）だったんじゃないのかしら。すでに大学生ですって？と近所のおばさんと化す。
その情熱的でたおやか、力強く自信に満ちた演技に魅了される。うっとり。
すばらしい。

テレビからは、前日のショートプログラムではふるわなかったというコメントが解説者から流れる。
そうか、まるでバレエ公演のように楽しんでみていたが、これはれっきとした闘い。競技なのだ。だから演技ではなく、「滑走」と表現される。しかし、究極の、自分との闘いではないだろうか。
途中で棄権したり演技を中断することなど、とてもではないが出来ない。
「自分との闘い、ストイックな競技」としてまずマラソンが挙がるが、フィギュアスケートもまた、自己のもてるコンディションそのままに、あらゆる要素を総動員してひとりで「試合」に臨む、という意味で、なんと過酷な世界なのだろう。しかも笑顔だ。ひりひりする、文字通り身をけずるような緊張感。
精神力も体力も必要だが、加えて芸術性という、訓練だけではどうにもならないセンスも必要とされる。

続く鈴木選手、浅田選手の演技は、どうしてもかすんでみえてしまった。
おばちゃんてばほんと勝手なんだから。

で、またまたオドロイたのが「ジュニア勢ってばワンダホー！」だったこと。
およ、小学生かい？と見まごうほど小柄であどけない宮原知子さん。演目はなんと「ロミオとジュリエット」だという。まあ、この二人も中学生くらいの年頃だったというのだから、現在中学生の宮原選手が、表現できないはずはないとはいえるが。
すばらしいのは、その技術力と軽やかさ、無防備なまでの思い切りのよさ。
これは少し前まで浅田真央ちゃんのウリだったはずでは。ああ、世代交代は、着々と進んでいるのだなあ。

と思いきや、トリを飾ったのが、高校生の本郷理華選手。白鳥の湖の黒鳥を、たんたんと、かつスピード感あふれる滑りと演技で完璧に終えた。164センチの長身。
結果は総合5位入賞。ご本人は、たいそう嬉しかったらしく、美しく丹精な顔立ちに、あどけなさを少しだけ覗かせる喜びの笑顔も初々しい。

うむうむうーー。そういえば村主章枝さんは？
ついこの間まで、大学生だった気が。
まだ虎視眈々と「次のチャンス」を狙う現役のようだ。

いやはや美しくも激しい女子フィギュアスケートの世界なのだっ。

22:51:52 | tenkakeru | |

15 December

キャロリング

「子どもは、大人の言うことをストレートに受け止めてしまう」
「不幸比べをしてどうなるっていうんだ」

不覚にも、この世の大原則を表すセリフに号泣してしまう。

劇団キャラメルBOX『キャロリング』を観賞した。
原作は『図書館戦争』で知られる有川浩さん、原案・脚本・演出が、ドラマリーディング講座で講師をつとめてくださった成井豊さんだ。

冒頭は、キャラメルか、成井さん演出なのか、の特徴のひとつミュージカルライクな「音楽と踊り」が導入されている。お約束？容疑者Xの献身でも採用されていた演出だ。
ミュージカル作品ではなく、踊りはこの部分のみ。設定の概要を視覚と聴覚、リズムを軸に、舞台空間を使った３次元世界で表すといった感じだ。

キャリアウーマン系の母と子、彼らと別居中でだめだめ系のんびり夫の家庭問題、幼いころ父親の暴力で苦しんだ青年と幸せな家庭で育った女性の同僚どうしの恋愛と座礁などが背景に敷かれる。主な舞台のひとつは、青年と女性が勤務する子ども服メーカーの職場だ。夢いっぱい、社員の自由度が高いのびのびした職場だが、経営が芳しくなく、間もなく解散する予定。社長は、青年の親族で、暴力のことは知らないまま子どもの頃からの、青年の成長ぶりも暖かく見守る存在でもある。
母娘は、この会社が運営する学童保育にお世話になっている。

本文冒頭のセリフは、青年から、少年と、その母それぞれに発せられた言葉だ。

子どもは、「大人は、両親がバラバラになった子どもの気持ちなんて分からないんだ。そんなかわいそうな自分を、父親のところに会いに連れていけ」と、半ば脅すように学童保育の指導員に訴える。
青年は、この態度を「自分がいかに不幸だということをアピールしてもしょうがない。人と不幸比べをして、自分が勝っているなんていう感覚を持ったままでは、前に進めないのだ」と、自身の経験に照らし、厳しく強い口調で言う。フツウの大人の姿勢を、するどく批判する、ドキリとする言葉だ。

一方、子どもは両親の問題を、自分のせいだとストレートに責める。
本作の少年は「お父さんとお母さんが別れたのは、夜。二人が喧嘩している間にボクが寝てしまったからだ」と思い込み、母が子ども服メーカー社員との会話で何気なく発した「この子のお父さんも、私の仕事を応援してくれる気持ちがあったらよかったのに・・」を「父母二人の橋渡しになり、父が母を認めていることを伝えればいいのだ！」と受け止める。
子どものそんな純朴さは、大人は誰も責めることは出来ない。

随所に笑いが織り込まれ、セリフがテンポよく飛び交う演出。役者さんたちの間の取り方も絶妙なのだろう（と、批評家ぶってみる）。設定も、現代社会に即したものである。とにかく、飽きさせない。

ちなみに、ダメ夫が「手に職を付ける」ために勤務するのは、接骨院。女性が院長としてひとり運営している。夫はいたく心引かれているようだが、院長その人もやはり仕事のオニ。しかも、院は先代からの借金を抱えており、消費者金融からの取り立てがしばしばやってくる。
この消費者金融もその背景をみていくと、ココロ優しい社長と、彼が抱えるダメ社員・・・という構図が浮かび上がる。

やはり生はいいなあ。
5000円（通常6500円のところ、演出家つながり割引）はちょっと痛いのは事実。
会場はほぼ満員だったのにもびっくり。人気なのか、堅実な口コミ効果なのか。

09:11:00 | tenkakeru | |

22 July

舞台：アルジャーノンに花束を（by　キャラメルBOX）

知恵おくれの青年が、「頭がよくなる」脳の手術を受け飛躍的に高い知能を獲得していく。
「ぼくはあたまがよくなりたい」。
「のろまで、なにをされてもいつもわらっている」青年がいつしか何十カ国も理解し１日２０冊もの本を読み、学会の重鎮たちでさえあっと言わせる新説を導き出して論文を発表するような、「天才」になっていく。
その過程で彼は、それまでの人生で人々が向けた自分への視線が決して好意的なものではなかったし、なかには「イジメ」に近い仕打ちもあったことに気づいていく。

先生として尊敬していた女性に対してはいつしか異性としての愛情を抱くようになる。

一方、生まれ育った家族で、「正常」を望む母親や実の妹が自分を余分もの扱いしていたという哀しい記憶も蘇る。いつもかばってくれた父親の姿も。そんな家庭を彼は再び訪ねるが、父親は彼を覚えていない。母親はもはや、現世に生きる人ではなくなっている。妹は過去の自分の仕打ちを覚えていない。
彼は、家族とまた、決別する。

やがて、彼の「知性」は再び変化を始める。今度は下降だ。ついこの間まで読めた本は何が書いてあるのか理解するのに時間がかかり、自分が書いた論文をまるで他人が書いたもののように感じるようになる。

最後にはまた、元通りの彼に返る。
彼はいつもにこにこしている。いまいる場所に満足している。仕事も大好きだ。親切な雇い主のためにはいっしょうけんめい働きたい。それだけ。

周囲はもう、そんな彼を馬鹿にしたりしない。知性を得たときも彼は、変わらず周囲に対する感謝を忘れず仲間を大切にする人間だった。それが「彼」なのだと知っている。そんな彼が、失敗をしたり、彼を知らない人から馬鹿にされたりしたら放ってはおかない。

ただ彼は、知性を得た時期に心から愛した女性に抱いた、一人の男性としての愛情をすでに持ち合わせていない。ぼんやりと、「あのころ」の感情を思い出せる。だけどそれが本当はどういう気持ちになるものだったのか、実感を伴って思い出すことは、もはや出来ない。

今の彼には、今居る場所に居ることに感謝し、せいいっぱいに幸せに生きるしかない。いまのままで、十分満足。それ以上でもそれ以下でもない。誰も恨みはしないし、後悔もしていない。そのすべを知らないから。

なんだか泣けるんだけど、すごく残酷な話だと思う。
知性を得た彼に対して、「今のあなたと話していると、まるで自分が何もしらない愚か者のように感じる。昔のあなたのほうがもっと優しくあたたかさを感じた」などと周囲は言う。それはあまりに一方的な自己中心的な解釈じゃないか、と私は思う。天才が嫉妬の目を向けられ、差別を受ける、という構図はあまりにも不公平じゃないか。むずかしいな。

視点を変えると、いかようにも解釈が可能、ともいえるのかな、このお話は。
これはまた原作を読んでみたくなるぞ。

しかしキャラメルBOXの持ち味が抑制されているように感じた。
原作への忠実度が高いというか。いやこれも私がいますんごく日常的に眠くて不機嫌な状態だからなのかもしれない。

21:45:10 | tenkakeru | |

08 July

打男

美しくタクマしい筋肉が、しなやかにしなり、力強くリズミカルに、文字通り「たたき」出す、DADAN!!!と。
観客は、聴くとか観賞するというより、その引き締まり、禁欲的な音のなかに知らずに引き込まれている。
打男。
だお、ではない、DADANと読む。なお、鼓童のだお、だおだああ！と興奮していたら、のちに「だだん」と読むことを知り赤面した私である。

坂東玉三郎演出、鼓童performの和太鼓の公演。

私がはじめて鼓童の公演をみたのは、佐渡島の小木港で行なわれた「アースセレブレーション」というイベントにおいてだった。思い起こせば２０年以上前。
パンフレットを見ると、パフォーマーたちはほとんどが80年代生まれだ！（うわー）私が女子大生ブームでブイブイ言わせていたころではないか！（フィクションです）
小木港で鼓童を見たころは、彼らはまだ５ー６歳の少年だった計算だ。時は過ぎたのだなあ。遠い目をするわたしがいる（涙）

上半身から下半身にかけては、腕の動きにつれて筋肉が動く程度でどっしりと、微動だにしない。
その腕はまるで丸太ん棒のようだ。（引き締まっているのだろうが、形状はどうみても「ハム」なんだけど）
これが目に見えないほどの速さで動いて細かで繊細なリズムをかもすかと思えば、まるで何かに向かって叫ぶような、
祈るような激しい音とリズムを、「たたき」出す。ただしかし、激しいが攻撃的ではない。心地よく、かつ気持ちをふるい立たせる音。どこか神聖な雰囲気さえ感じられる。
約１時間４０分、たたきっぱなし。全身、まるで水を浴びたかのように汗みずくになる。

でもたいそうな贅沢をいえば、鼓童は佐渡島で聴く（感じる）のがよい。
アース・セレブレーションの雰囲気は　http://www.kodo.or.jp/ec/
別にまわしものではないけれど。ええで～。
しかし小木港で、帰りのフェリーを待つ間に立ち寄った居酒屋のおばちゃんに「あんたらは夏だけ来て楽しく佐渡島で過ごしているからね～、冬の厳しさは知らないから…」と言われたのを思い出す。
しょせん、ひとなつのお気楽旅行者なトカイモン、をおばちゃんは、ちくりと優しく少しだけ指した。

ちなみに、本日の公演の最後に坂東玉三郎さんが登場されましたが、個人的には背広姿がいまいちサマになっていなかったのではないかと思いました。ちなみに、です、ちなみに。

23:07:39 | tenkakeru | |

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