かけるの千住日記

Archive for October 2008

26 October

下町は、何の「下」なのだろう。

あるとき、長身モデルスタイルの美人OLのサヤカちゃんとランチをした。ぺちゃくちゃとしゃべっているなかで、「小汚い系だがおいしいお酒と料理を出すディープな店が好きなの」とサヤカちゃんが発言。そういうお店って、下町に多いよね、という流れのなかで「下町とは何を指すか」という方向に話が進んだ。
下町をサユイさんは「城下町」と解釈していた。そこで、私もその案に乗り、下町すなわち江戸のまわり、という解釈を強引に成り立たせた。え、違うだろって？そうなんだけれど。ま、いいかって思って。
その前提でいくと下町とはどこかなー、と二人で考えた。実際に下町といわれるのは、月島、浅草、千住、谷中・・・などなどだ。それらって、江戸に近いんだっけ。一方、「麻布十番」や「六本木」はコじゃれたイメージがいかにも「城下町」に近いが、下町とは言わない。たぶん、江戸城のあった丸の内周辺から遠い？からなのでは？いやむしろ、月島や浅草よりは近いような。え、だから違うみたい？・・・などと話はドンドン怪しい展開になっていく。ぐるぐるぐるぐる。も、もう完全に、見えない。見失った・・・。

帰宅後、yahoo辞書（大辞泉）で「城下町」を調べてみた。「戦国時代から江戸時代にかけて、大名の居城を中心に発達した市街。」とある。やはり江戸城の周囲を城下町というのが本当なのだろう。ただ、現在の丸の内、日比谷などは「城下町」の風情は残していない。一方、「下町」を調べてみると「都会で、土地の低い所にある町。多く商工業地になっている。東京では浅草・下谷・神田・日本橋・京橋・本所・深川などの地域をいう。」とあった。下町＝城下町という意味では、もちろんない。そうだよね。下町と呼ばれるところってどこか泥臭くて人間くさくて、イイ意味で高級感に欠けるもの。「お城」のセレブなイメージとはかけはなれている。

私が住む街、千住は下町だけど、江戸から遠い。さらには、「川を越える」ともう、そこは「ラベルが違う」世界だと聞いたことがある。島流し、に近い状況になったとか。江戸時代、小塚原の処刑場があったのは、現在の南千住でしたか。「下町」といわれるエリアはやっぱり「城下町」からはほど遠いみたいよ、サヤカちゃん。

16:37:00 | tenkakeru | |

22 October

し、しゃちょーっ！

ふとしたことから、昔の知り合いを思い出し、ふと、なぜかその名をネット検索してみた。きわめて不思議な行動を私はとった。
すすすると、なんといくつかのサイトでその名が「代表取締役社長」という名称とともに登場しているようではないか。
佐藤まさる、とか木村ケイコなんていう名前は同姓同名がけっこういそうだから、教授だの県議会議員だの、ママさんバレーボールチームの一員だのでヒットするものだが、わが友人の名はけっこう珍しい名前。
ヒットしたURLのひとつに、おそるおそるアクセスしてみる。すると、その人（仮に高野誠二くんとしよう）のプロフィールが。生まれた年も誕生日も、出身校もビンゴじゃないか。いやはや。ちなみに丙午年生まれ。
彼は去る中堅出版社の社長となっていたのだ。つい２年ぐらい前のことである。
おくちはうまかったなあ。将来は船長となって七つの海を航海するだのという妙な夢を語っていたこともあったっけ。そういや他の友達と旅行にいったことも。鍋バーティーをしたときは、きゃつは早くにベロンベロンに酔っぱらってしまったものだ。
びっくらこいた。

話は変わるが、こんどは女しゃちょーの話だ。彼女は私の従姉妹で、ふだんはロスアンゼルスに住んでいる。５歳と６カ月の男の子の母親。夫は中規模の企業の社長だ。彼女は、夫社長の業務を手伝っているのだ。いってみりゃ「女しゃちょー」というヤツだ。仕事柄、ロスと日本を往復することが多く、先頃２週間ばかり日本に滞在した。その際、彼女に久しぶりに会った。
麻布十番にある、「有名人もよく訪れるガイジンさんにも人気の焼き鳥屋」さんで食事をした。因みにその店は、メニューに値段が書いてない。げ、なのだが、それほど高いわけではなく、女の子が飲んで食べて一人５０００円ぐらいだった。西麻布にも店があるが、そちらでは、私の年上の友人の息子さんが店長さんをしている。その日はたまたま「焼き鳥にしよう」ということになって、麻布十番店を訪れたのだが、西麻布に足を伸ばせばよかったなあ、なんて後から思った。焼き鳥はたいそう美味しかった♪

食事の最中、いろいろ話したのだが、そのなかで彼女が繰り返し触れていたことがある。日本は、赤ん坊を連れて歩く人に優しくないと。今回の訪日では日本側のスタッフと外食する機会が多かったそうだが、段差が多く、狭くて移動しにくい店が多いのだそうだ。また駅にはとにかくエスカレーターやエレベーターが少ない。エスカレーターはあったとしても、ベビーカーは利用禁止ときている。「赤ちゃん連れは出歩くなってことなのかしら！？」とニコニコ憤っていた。

それから、これは赤ん坊連れとは関係のない話題だが、今回は仕事でマスコミ関係者の取材に応じる機会があったそうだが「外国人記者はいいの。だけど、日本人記者は『この質問の裏に何があるのかしら？』っていつもヒヤヒヤしながら取材に応じていたわ」という。「日本人は話すこととお腹のなかのことが違うから、疲れる」とも言っていた。なるほどうっ。

高野君にあってみたいなあ。どうなっちゃってるかな。１０年ぐらい前に会ったときは、はやメタボ腹していたけど。
いまじゃリッパな・・・かしら。あるいは。

従姉妹はきょう、ロスに帰っていった。通訳にスタッフのディレクションにマスコミ対応にと大忙しの２週間だったようだ。体に気をつけて。生意気ざかりの５歳児との闘いの日々がまた始まるよ！

17:01:00 | tenkakeru | |

17 October

もつ鍋ランチ＠本陣

ある雨の月曜日。銀座・新橋界隈に何店舗か姉妹店を持つもつなべや水炊きの専門店「本陣」へ赴いた。誘ってくれたのは、隣の席のサユイさん。目当ては、もつ鍋だ。昼間からオンナ二人でもつ鍋。ナイスな展開である。サユイさんは身長160センチはあろうかという長身で、モデルと見まごうようなで、抜群なスタイルの持ち主である。そんな彼女であるが、「おやじな店」が大好きなのだそうだ。ガード下にあるような一見「小汚い」がしかし、つまみが充実・・・という店がお気に入りだという。ただ、本陣さんは、そうした「小汚い」系の店ではない。念のため。

もつ鍋、美味かった。薄切りニンニクの入った塩味のスープにモツとたっぷりのキャベツ、ニラ、そして赤唐辛子が入っている。スープは醤油か塩から選べるのだがサユイさんは迷わず塩を注文。「塩のほうがめっちゃうまくてオススメ」だからという極めて明快な理由からだ。
ニラ大量投入後の、まるで野原の雑草のごとき様相の鉄鍋に火をつけてもらい、ぐつぐつ煮立てる。店員さんが穴の開いたお玉と普通のお玉でそれら「草系」野菜を押さえ付けてくれる。しばし待つ事、5分。「もういいんじゃないスか」とサユイさんが提案。そこで、箸をのばそうとするも、どうみてもなべの上のほうのニラの一部は「生のシャキシャキ感」を主張している。そこで、さらにしばし、待つ。
ほどなくサユイさんが下のほうのキャベツを食した。「ちょっと固いけど」といいつつ、さらに箸を伸ばす。彼女のこの行動を機に私も、「なべをつつく」体勢に入った。スープをすくい、身をよそい、サユイさんが擦っておいてくれたゴマをぱらり。まずはずずずとスープをひとくち。おいし～い！！めっちゃ美味いぜまじで。ご飯にも麺みも抜群に合いそう！
続いてモツを口に入れて噛み締める。あわわ。こりゃおばちゃんにはたまらん。早くも奥歯に挟まってしまった。でもじわりと口のなかに広がる脂身が美味。
私は、温野菜に目がない。そこで、野菜をメインに攻める作戦に出た。サユイさんはご飯も積極的に攻めている。「このご飯全部食べたらふとりそー」などと言いつつ、あまり躊躇は感じられない気持ちよさでぱくぱく口に運ぶ。二人の「ジョシ」はべちゃくちゃとしゃべりながら旺盛な食欲をみせる。

食事中、家でなべをするか、とかどんな鍋料理をよく食すか、という話題でしばし盛り上がった。友人の多いサユイさんは、１０人ほどを招いて鍋パーティを開いたことがあるというが、これは文字通り「頂けなかった」そうだ。いったん煮上がった鍋の中身は、全員が箸を出せばいっぺんでなくなってしまう。そして新たに具を入れて再び煮上がるのを待つ。そのため、「ひもじい思いをする時間が長かった」のだそうだ。
ちなみに彼女のイチオシは火鍋。辛くて濃厚なスープでいただく、中国生まれの鍋料理だ。いつもパワフル、仕事もプライベートもフルスロットルという感じの彼女にぴったりの料理ではないか。

もつ鍋の〆は、ちゃんぽんだった。ちゃんぽんといえばすぐに「長崎」を思い浮かべるが、この店は「博多もつ鍋」をうたっている。同じ九州だもの、そゆもんスね。昔給食に出た袋入りの「中華麺」のような食感だった。スープに、よく合う。あっというまに平らげてしまった。一息ついたところで店の壁に目をやると、小島よしおや阿藤快のサインが。かなりの有名店らしい。有名店といえば、彼女は恵比寿の超有名店「蟻月」という店にも足を運んだことがあるそうだ。

食事の最中、そういえば昔もつ鍋が流行ったよねえ、と彼女にふってみた。がしかし、「ふううん」と、けげんな表情。そそそうだ！愕然とした。世代が違うのだ！もつ鍋がブームとなった15年ほど前といえば彼女はヘタをすると小学生。よくいって中学生。当時はそれこそランチは給食だったろう。ましてやもつ鍋と焼酎などというディープな世界からはほど遠い空間でときを過ごしていたはず。行きがかり上、居酒屋がこぞって「もつ鍋屋」を掲げたこと、ブームが去るのは早く、去ってからはそうした店は何事もなかったように再び居酒屋のたたずまいとなったこと、などを話した。ふうーん、とあまり興味もなさそうな反応であった。

とはいえ、コラーゲンやビタミンをたっぷりとった私たち。明日はより美しくなるはずだわ～。

16:25:00 | tenkakeru | |

13 October

ある女性ランナー。

その人は、２児の母であり、妻であり、ヨメである。つい最近、祖母にもなった。
そして、ランナーである。
正確にいえば、ランナー「であった」。
現在57歳。男女二人の子どもはとっくに成人した。一人はすでに嫁いで１児のママ。もう一人も間もなく結婚する。

走り出したきっかけは、遡ること32年前。二人目の子を出産し終えた直後のことだった。
「産後太りだけはぜったいにないわよ!」
彼女は、そう誓った。
いまのように、ダイエット情報が豊富だったわけではない。
運動して、食事を制限するというシンプルなしかし「王道」を彼女は選んだのだ。
なぜ走ることを選んだのかといえば、住まいの近くがコースになるマラソン大会が開催される旨を知ったから。これに出るために、ま、がんばって走ってみるか！と思ったのだった。目標を設定するとまっしぐら。それが彼女の特性だ。

朝６時におきて、ジョギングするという毎日が３ヶ月つづいた。
３ヶ月後、本番のマラソン大会。彼女は1.5ｋｍの部に出場した。
男女混合の部で、まわりは中学生の男の子ばかり。なーんだ、かわいいじゃん。もしかしてあたし、入賞しちゃうかも？　うふ。
・・・しかしレースは無残な結果に終わった。中学生男子たちは部活で鍛え上げた体育会系ばかり。1.5ｋｍなんて、ほとんど毎日準備運動程度に走っていたのだ。
「ぐやじぃぃぃぃ」
勝気な彼女の心に炎が燃えさかる。見かけは、おっとりした松田聖子、という雰囲気の彼女だが、Qちゃんに引けをとらない負けん気の強さの持ち主であったのだ。

次の日から本格的な走りこみがスタートした。最初は疲れるだけだったが、そのうち、走ると爽快感を感じるようになった。体つきもどんどん変わっていく。気づかないうちに、ふくらはぎも太ももも、みごとにムキムキマンに。いやだあ、スカートはけなあい、とは思ったもののもうライフワークといえるほど、走ることにのめりこんでいた。

年に何回か、いろいろなマラソン大会に出掛けていくようになった。やがて、出場レースは５ｋｍ、１０ｋｍ、２０ｋｍそしてハーフマラソンの部に。入賞回数も増えていった。はじめて優勝したのは、湘南の海岸がコースに含まれた大会。公道を走る大規模なものではなかったものの、うれしくてうれしくて、その日はメダルを抱いて寝た。

彼女はだが、ただ走るだけの「ママさんランナー」ではなかった。「エレガントなアスリート」をめざしたのだ。ウェアにはとことんこだわった。それほど多彩なデザインがあるわけではなかったし、なにより昔は「スポーツ＝ストイックに取り組む」というイメージのほうが先行していた。ウェアをおしゃれに、華やかに、などという発想はなかったわけだ。だが、彼女はピンクやオレンジ、などなるべく彩り豊かでかわいらしいデザインのものを選んで身につけた。本番のレースの日は、ばっちりメイク。だってこれは私の本番の舞台。沿道の観客に恥ずかしくない「走り」を見せなくちゃ。そう考えたからだ。本番に臨む女優さながらに、気合が入った。

やがて、彼女の頭に「マラソン」という言葉が浮かぶ。マラソン＝42.195ｋｍである。
出場したのは、青梅マラソンだった。レースは極寒の２月。少々ひざもいためていたが、出場を断念するつもりはなかった。ショッキングピンクのタイツをはきひざにはライトブルーのサポーターを身につけた。
その姿を、タウン情報誌の記者がとらえ、写真に納めた。翌日各戸に無料で配られたその新聞には大きく、彼女の写真が。記事では女性ランナーの活躍ぶりを伝えていた。華やかな、女性アスリートの先駈けだ。そのことを、彼女自身も意識したし、何よりも認められた気がして嬉しかった。
彼女が青梅を走ったのは30年ほど前のこと。1979年に第一回目が開催された「東京国際女子マラソン」前夜のことである。

だが彼女が、42.195ｋｍを走ったのは、その１回のみだ。いためていたひざに、42.195ｋｍは、想像以上のダメージを与えた。軽いジョギング程度ならいいが、もう長い距離を走ってはならじ、とドクターからお達しが出たのだ。

そしていまではもう、彼女は走ることはない。歳を経るごと、ランニングに魅せられた体のあちこちは悲鳴を上げだした。腰も痛めた。ドクターはもう、ジョギング程度ならよし、とも言わなかった。完全なるドクターストップがかかった。
でも、走っていたころの自分がなにより好きだ。子どものころは運動なんか大嫌いだった。音楽も、絵も、手芸もお菓子作りも、およそ主婦の趣味として人気だったことたちは全く興味がわかなかった。夢中になれたのは、走ることだけ。一生のうちで、もっとものめり込み、時間を費やした。最愛の、恋人のように。
風を切り、無心に地面をける感覚を、また味わいたい。

「でも神様が『もう一生分走ったから、やめなさい』と言っているのだと思う」。
走ることはもう、あきらめている。いまはだから、走ることに変わるなにかを、探している最中だ。ウォーキングなんて、まっぴらごめん。走っていた私がトロトロ歩くなんてナンセンス。泳ぐのは大の苦手。水があまり好きではないもの。チームを組んでやる球技も、私の性に合わない。
そう考えると、もう、夢中になれるスポーツには出会えないかもしれないと思う。スポーツ以外で、楽しめるものは何かないかしら。

だったら、スポーツとはちょっと違うけど、歌うことは、どうだろう？　楽曲に合わせて思い切りよく声をあげ、歌の世界に入りきる。けっこう、肺活量も増えそうじゃない。いっそのこと、仲間を募って合唱するのもいいかもしれない。歌なら、大勢のほうが楽しい。カラオケ仲間に声をかけて、同好会を作ろうかしら。毎年、市民文化祭なんていうのもある。舞台発表することを目指して練習をすれば、張り合いも出てくるだろう。

いつも輝いていたいから。なにかに向かって、夢中になっている自分が好きだから。走ることがすべて、だなんてもう思わない･･･。

まだ彼女は57歳。人生、楽しいのはこれからだ。彼女はこれから第二のステージに向かって、好奇心いっぱいに歩いていくのだろう。

17:03:00 | tenkakeru | |

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